足の外傷
基本的に外傷の部位が変わっても考え方は同じである。今回は、治療の仕方についても説明を加えた。
86歳、男性。脳梗塞後状態で血小板凝集抑制剤(商品名パナルジン)を内服中であったが、前日に畑にて右足で木板を誤ってけり、右足背部を損傷し、市販のキズ絆創膏を貼って来院した。
右足背に2.0*0.5cmの皮下までの挫創をみとめた(画像1)。この段階で、これまでならイソジン消毒とゲンタシン軟膏を塗ってガーゼを当てるところだろう。
画像1
まず、水道水(お湯)で洗浄(画像2)し異物の残留がないことを確認した。
画像2
皮弁を切除し(壊死して異物になるのを防ぐため)、アルギン酸塩(止血効果が強い)とフィルム材で閉鎖した(画像3)。内服の処方は行わなかった。
画像3
1日目、出血はなく創の痛みもなかった(画像4)。浸出液がやや多かったためポリウレタンフォーム(スポンジ状で弾力性があり吸水性もある)での被覆に切り替えた(画像5)。この日から、このままの状態での入浴を可とした。
画像4 |
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2日目、4日目、6日目と通院してもらい創の状態を観察し、感染の徴候がないことを確認した。
8日目には創の周囲から上皮化がすすんできた(画像6)。感染の徴候はない。浸出液の量も減ってきたため、この日からハイドロコロイドでの被覆とし(画像7)、自分で被覆材の交換を行ってもらうようにした。ほぼ2日に1回の割合で交換してもらった。
画像6 |
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14日目には上皮化がすすみ、さらに創が小さくなっていくのがわかる(画像8)。
画像8
19日目、完全に上皮化した(画像9)。キズ絆創膏のあとが残って見えるが、これは被覆材の固定のために本人が貼ったものである。
画像9
経過中に痛みの訴えはなく、鎮痛剤を必要としなかった。当然、抗生剤の投与も行っていない。前例の指の外傷よりも早く治癒したのは、創の深さと広さが違うからであると考える(当然か)。基本的な考え方は部位が変わっても同じである。異物を残さないこと、消毒しないこと、乾燥させないことである。
最終更新日:2004.05.18