指の外傷

 

66歳、男性。アスピリン製剤を内服中であったが、仕事中に電動カンナで左環指指尖部を損傷した(画像1)。

画像1

爪床の2/3と骨にも損傷があり、骨の露出が見られた。この段階で、断端形成を選ぶ医師もいると思う。とりあえず、止血と異物が混入していないことを確認し、アルギン酸塩(止血効果が強い)とフィルム材で閉鎖した。傷の痛みに対しては内服の消炎鎮痛剤を1日2回投与した。

 

2日目には止血が確認されポリウレタンフォーム(スポンジ状で弾力性があり吸水性もある)での被覆に切り替えた。4日目、創周囲の発赤、疼痛と腫脹が見られた(画像2)ため感染と考えて2日間抗生剤の点滴静注を行った。

画像2

その後、傷の痛みは軽快したため、鎮痛剤の内服は1日1回とし、6日目には中止した。9日目から自分で被覆材の交換を行ってもらいようにした。

 

11日目には創の周囲から上皮化がすすんでいる(画像3)。創の表面に見える黄色い部分は膿のように見えるが感染の徴候はない。

画像3

 

19日目にはさらに上皮化がすすんだ(画像4)。傷のまわりが正常な上皮になり、傷が小さくなっていくのがわかる。

画像4

 

25日目からハイドロコロイドでの被覆とした。38日目には完全に上皮化した(画像5)。

画像5

 

71日目、指尖部の形態も良好であった(画像6)。

画像6

この患者さんの指先を見ていただくとわかると思うが、適切な表現ではないかもしれないが、欠損した指が伸びているように見える。完全ではないが、ほとんど元の状態に近いと思われる。これは、正常に治癒した場合の人間の再生能力を表しているように思う。これまでの治療で、果たしてこのように治癒するだろうか。

最終更新日:2004.04.22