膝の外傷

 

2004年7月22日から28日までに、6歳男児の膝のすりむき傷の症例をリアルタイムで掲示板に載せました。今回はその内容をそのまま、まとめて出しておきます。何度も言いますが、傷の場所が問題ではありません。

 

患者さんは6歳、男児。本日、公園で遊んでいて転倒し左膝をすりむいて来院した(画像1)。細かい砂が入っていたので水道水で洗浄し、アルギン酸塩とフィルムで閉鎖治療(湿潤治療)とした。

画像1

 

1日目。前日、もしフィルムがはがれたらポリウレタンフォームを貼るように話しておいた。やはり汗ではがれたらしくポリウレタンフォームを貼っていた。写真は被覆材をはがしたところ(画像2)。創の表面にcolonizationと思われる黄白色の付着物が見られる。創の痛みはない。水道水で洗浄し、ハイドロコロイドを貼った。当然、ここまで消毒はせず抗生剤も使用していない。

画像2

 

2日目。ハイドロコロイドは浸出液で白くゲル化していた。家では、じっとしていないらしく被覆材は少しずれていたが、なんとか創の上にはのっていた。創の状態は昨日とほとんど変わらなかった(画像3)。今日も同じくハイドロコロイドを貼った。明日は家で親御さんに交換するように話した。膝は常に動かす場所であり安静は難しい場所である。はがれたら交換してもらうように話してある。

画像3

 

4日目。ハイドロコロイドにできる白くゲル化する部分が小さくなってきた。浸出液が少なくなってきたからである。創は縮小してきた(画像4)。ハイドロコロイド被覆材を貼ったままで入浴も、プールにも入っている。もちろん痛みはない。

画像4

 

5日目。創はほとんどドライになり、ほぼ治癒に近い状態となった(画像5)。この時点でワセリンのみでも問題はないと思われるが、今日までハイドロコロイドを貼ることにした。

画像5

 

6日目。創はすっかりドライになった(画像6)。終了。
経過中には痂皮(かさぶた)はみられない。これまで、かさぶたは傷が治る時にできると思われてきたが、かさぶたを作らないようにする方が傷はきれいに治るのである。

画像6

 

この症例は、リアルタイムに掲示板に載せていきました。つまり患者さんが来院したその日の状態をそのまま掲示板に発表する形をとりました。内心、ハラハラしていました。たまたま今回は良好な経過をとったのでよかったですが、もしかしたら感染(化膿)したり、痂皮(かさぶた)を作ったりする可能性もあるからです。実際のところ、この閉鎖(湿潤)療法でも感染することはあります。どうしても避けられない症例はあるのです。しかし、それは従来の治療でも同じ事であるかもしれず、この新しい治療だからそうなったのかどうかを見極めなければなりません。そのためには傷がどのようにして治っていくかということを理解していないといけません。私には、ただ漫然と消毒だけをしている人にはそういうことを理解しているとは思えません。私は患者さんの傷の状態をデジカメで撮って、それらをよく観察しているうちに、傷の本質というものを考えるようになりました。初診時に感じていたこととあとから違うことを感じることがよくあります。一見して、ひどそうだと思っても案外すんなり良くなったり、軽そうに見えてもなかなか良くならなかったり。おそらくまだわかっていない部分はあるのでしょうが、真理を探求する気持ちは持っていきたいと思います。

最終更新日:2004.09.03